翌朝、正太郎の部屋の前でみくが考え込んでいた
「うーん。ウチも手伝うって言ったら正太郎は『来ちゃ駄目』って言うやろうし・・・」
そう呟きながら扉の前を右往左往していると鈴音が来た
「寝込みを襲うなら夜中じゃないとあまり意味はないわよ。あっ、知った仲だから大丈夫かしら」
「そんな事せーへんよ」
「あとウチの息子を傷物にしたらきちんと責任取って結婚して貰いますからね」
「せやから・・・」
そう言ったあとみくは止まった
(正太郎の寝込みを襲ったら結婚出来る・・・いや、そんな事したら正太郎を困らせる事にしかならへんし・・・)
鈴音の一言によって違う事に悩み始めたみく
そこにやってきたのは清太郎
「ん?何やってるんだ」
「ええ、みくちゃんが正太郎を夜這いしようかどうか悩んでいるらしいんです」
「うーん。強硬手段はあまりお勧めしないぞ」
「でも清太郎さん昔、私のところに夜中こっそりと・・・はうっ」
鈴音が喋っている途中を清太郎は止めた
「さ、邪魔しちゃ駄目だから二人でご飯食べようね」
そう言って清太郎は鈴音を連れて階段を下りていった
一方、未だに悩んでいるみく
その時、正太郎の部屋の扉が開く
「あっ、お姉ちゃんおはよう。ところで廊下で何してるの?」
「ん〜っ、さっき夜這いしたら結婚せなあかんって言われて・・・し、正太郎何時からそこに居たんや!」
「今起きた所だけど?」
「そか、ところで今日は退治しに行くんか?」
「いや、あのトンネルの事を調べてからじゃないと」
「と言う事は聞き込みか?」
「それも良いけど普段からあまり人通りがない所だから聞き込みは難しいと思う」
「じゃあ、どないすんねん」
「とりあえず図書館に行って歴史を調べるつもりです」
「さくらの資料じゃアカンのか?」
「さくらの資料は噂を纏めているので歴史とかは必要でない限り載っていないから」
「そか、じゃあ朝食食べたら図書館へ出発やな」
「そうだね」
こうして二人は朝食を摂る事にした
台所へ行くと清太郎が食事を摂っていた
「おはよう」
「ああ、おはよう。ところで襲われたか?」
「襲われるって誰が?」
「それは・・・」
清太郎は正太郎の後で慌てふためいているみくを見て台詞を止めた
「ま、無事で何よりだ」
「?」
正太郎は首を傾げる
「はい、ちゃんと食べないと一日元気に過ごせませんからね」
鈴音は正太郎とみくの分の朝食を食卓に置く
二人は椅子に座りご飯を頂く事にした
「いただきます」
そう言って黙々と食べる二人
その沈黙を破るように清太郎は言った
「ところでみくちゃん、今日はソフト部の試合があるんじゃなかったの?」
「ソフト部の試合?」
「ほら、ソフト部のキャプテンに一試合だけで良いからピンチヒッターで出て欲しいって言われたんじゃないの?」
その言葉にみくは試合の事を思い出す
「・・・忘れてた」
「じゃあご飯食べたら行かないと。図書館には僕一人で行くから」
「そやな」
そう言ったみくの台詞は少し暗かった
「ごちそうさま」
二人はご飯を食べ終え正太郎は図書館へ、みくは試合会場となっている学校へと向かう
それから数時間後
「結局、まだ何も言えてない」
ソフトボールの試合後みくは商店街を歩きながらそう呟いた
「アカン、ここは一つ正太郎の為に情報収集でもせな」
そう言って商店街の裏へと向かう
そこには一区画だけ空き地があり静まりかえっていた
「皆、ちょっと来てーや」
みくがそう言うと・・・
空き地に行ってから1時間後、みくは手に入れた情報を持って正太郎が居るであろう図書館へ向かう
図書館の自動ドアが開くと涼しい風が流れてくる
みくは奥で調べ物をしている正太郎を見つけ近づいていく
「40年前に作られたって事以外特に何も書いてないな」
正太郎は本棚の前で黙々と調べ物をしている
(気付いてないようやしちょっと脅かしたろ)
そう言ってそっと近づくみく
そしてあと数歩というところで
「そうだ」
突然みくの方に向かって横移動した正太郎にみくはぶつかった
「にゃ」
「うわっ」
みくはそのまま正太郎を押し倒した
「ごめん、正太郎」
そう言って下を見るが正太郎は居ない
「く、苦しい・・・」
正太郎はみくの胸に埋もれていた
みくは慌てて立ち上がる
「正太郎、ホントにごめん」
「お姉ちゃんが怪我してなければ僕は大丈夫だよ」
「せや、正太郎に言わなアカン事があったんや」
「何?」
「商店街で仕入れた情報なんやけどな、あのトンネルがある山は昔から幽霊話が絶えなかったらしいんや」
「うーん・・・でもそれなら家に何らかの資料があっても良いと思うけど」
「それがな、幽霊が出ると言う事以外これと言って何も問題が無かったらしくただ近づかなきゃ良いって感じだったらしいんや」
「でも40年前にトンネル作る時に地鎮祭したと思うけど資料がないと言う事は家がやった訳じゃ無いのかな」
「その辺はようわからんけど・・・あと一昔前までは暴走族なんかがあの道よう走り寄ったらしいで」
「へぇ〜」
「でも10年ほど前に事故があったのと別の道路が造られた事で今は通らへんのんやって」
「そうなんだ・・・それにしてもお姉ちゃんよく調べたね」
「知り合いに知ってる奴がおったから詳しく分かっただけでたまたまやで」
「それでも情報が入っただけで十分だよ。僕なんかさっきから調べてるけどサッパリだったし」
「せやったんか・・・それならこれで解決の糸口は見つけられそうやな」
「うん。ありがとう、お姉ちゃん」
そう言って正太郎は持っていた本を返し
「事故なら新聞に載っているはずだからさくらに時期を特定して貰って調べてみよう」
「そうやな」
そう言って二人は図書館をあとにした
「うーん」
その夜、さくらに調べて貰った結果用紙を見ながらベランダで考える正太郎
その横でみくは黙って正太郎を見ていたが言いたい事があったので口を開く
「あのさ、正太郎」
「どうしたの?お姉ちゃん」
「その・・・な、今度の件はウチも一緒に行って良い?」
「駄目だよ。幽霊が見えるからってそんな危険な場所に連れて行く訳には行かないし」
「そんな事言わんと・・・な、うしろの方で見学するだけでも・・・」
「駄目なものは駄目。お姉ちゃんにもしもの事があったらどうする事も出来ないし」
凄い剣幕で怒る正太郎。しかしその顔もすぐにやめ
「お姉ちゃんが協力してくれるのは嬉しいけどいざという時に今の僕じゃお姉ちゃんを守りきれないから・・・ごめん」
「正太郎が謝る事ないで、ウチが無理言ってるんやから」
「でも、これは事実だからね。だから僕一人でやってみるよ」
「・・・分かった」
そう言ってみくは自分の部屋に戻っていった
「お姉ちゃんが最近巫女の修行しているのは知っているけど・・・今の僕は自分だけで精一杯なんだよ」
正太郎は結果用紙を見ながらそう呟いた